照準調整
照準器は、調整しないと使えません。ゼロ・インと申しまして、事前によく使うか、ルールで決められた距離で狙ったところに当たるようにしておかねば、銃は使い物にならないのです。
光学照準器は案外調整が容易いのですが、視線が動くことで起きるパララックスに慣れておかないと正確な照準は得られません。スコープを覗いたとき、視野の回りに黒い縁が充分見出せるように接眼レンズと目との距離を据え付け位置で調整しておき、縁が満遍なく同じ幅になるように、覗く人が慣れておかねば、本来のゼロ・インは有り得ません。光学照準器は便利ですが、この料理の仕方で大分当たり外れを片寄らせてしまうのです。
しかし、それを旨くこなせれば、ゼロ・インは弾を3個撃てば済むといえます。
拡大される為対象の確認や照準が容易に出来る光学照準器は便利です。でも、これがあたりまえ、ではないのです。本来銃には固定の照準器が欲しいところですが、最近はそれを省き、光学照準器を載せることを前提とした商品が多く見られます。
単にコストダウンであるとも、言われています。
光学照準器を事前に銃腔に対し平行を出すには、レンザティックボアサイターという、凸レンズの特性を利用した調整援助器具があります。左程高価ではなく求め易いのですが、スコープを一個しか使わない人は、お店に備えてあるのを借りて、一先ず真ん中出しをして、射撃場で精度出しをすればいいでしょう。遠距離を撃つ場合は、予めサイターの目盛りを利用し、トラジェクトリダイヤグラムの数値を元にレティクルを合わせておけば、弾が何処へ行ったか分からなくなることはないものです。照星と照門を使う固定照準器は、慣れた人ならある程度、佇まいで調整を出せます。しかし、それは大変高い技で、見かけだけでぱっぱと合わせて撃ったら当たる人は大勢知っていますけど、やっぱり魔法のようです。
そこで、予め射撃場で撃ってみて合わせる訳なんですが、これがまた大層な弾数を必要とします。何時迄やってもきりがない。段々疲れて来てまあいいか、となる。その結果望遠鏡を載せる、というのの悪循環です。
望遠鏡とて完璧ではありません。
しかし、固定照準器のメリットは、パララックスが存在し得ないことです。雨で水を貰って曇ったり故障したりすることもありません。視野の中にある銃を操れるというのも、大いなる利点です。
射撃に熟達した人の殆どは、固定照準器の方が確実に有利だ、と必ず言います。
となれば、何らかの裏技を見つけて来るのが手です。
レーザー・ボアーサイターという道具があります。
勿論、光学照準器の調整にも使えるのですが、これは、固定照準器のアライメントにとても役立ちます。銃口に指して程よく、指先で揺すって動かない程度にアーバーを締め込み、スイッチを入れますと、凡そ銃身の直線前方を照射します。強く締め込むと片寄りますから注意が必要です。最初は何度も占めたり緩めたりをしてみて、一番落ち着くところを探します。慣れれば次からはスグ出来ます。
照門は、横方向ウィンデイジは目盛りの真ん中に合わせておきます。上下は専ら一番下げておいて良いでしょう。
銃を置くなりして余り動かないようにし、最低でも50〜100mの距離を照射し、照門から照らされた明かりを見て、照星が何処にあるかを調べます。
照星の位置は銃の真直ぐ上にあるか、というと案外そうでもないのです。勿論品のグレードにもよるのですが、大体は、レシーバーが銃台に乗っている、或いは自動銃のフレームから見たら、真直ぐ上には着いていません。それを照門だけで合わせようとすると銃に寄りますが片方に大きく動いてしまって、頬付けに影響する程になる場合も少なくないのです。
ご覧の銃の場合は、一寸撮影状況が宜しくないですが照門の両脇のヤマの高さを結んで頂いて分かる通り、照星を載せているリブは結構大きく傾いています。
銃が傾くと当たりません。照準線は直線ですが、銃口から発射される弾丸は真直ぐは飛ばず、弾丸や速度に応じた固有のフライス、ドリフト、そして落下という複雑な軌跡を描いて飛んでいき、やがては地面に落ちるのです。射的や狩猟に用いる銃の場合、落下する迄の間の飛翔中の弾丸を、任意の距離に置かれた垂直面に当てて効果を得るのが目的です。傾いた銃からは傾いた飛翔線を弾丸に与え、任意の距離における垂直の概念から大きく離れた斜めかつ山なりの到達点列を持つことになり、制御が難しくなり過ぎるのです。そのため、銃を垂直にした時に、銃身の延長線と照門との整列の中に照星を入れてやらねばならないのです。
猟銃の照星は普通、寸法的にギリギリ一杯のアリミゾとダボで支えられています。大抵はダボのところを軽く横から小振りの金づちでチョコチョコと叩けば動きますので、照門の切り欠きの真ん中と照射点の真ん中の整列に入るように動かします。
その後、初めて照門を動かしに掛かります。照門の中に照星が入るように覗き、照門の上下調整にて、光点の中心が照星の直上に来るようにします。
ボルト式の銃なら、銃を固定し、ボルトを抜いて銃腔を見通し、目的点を補足してから照星と照門を覗いて整列を取ることも出来ます。しかしこの銃を固定する装置がレーザー器具より高い上、射撃場の何処にでもそれを固定して利用出来る台があるとは限らないので、多少不正確な一面は拭えませんがこうした小振りの道具を用意しておく方が便利です。
正しく調整した照準器で、気持良い射撃を楽しみたいものです。