:エアソフトガン種目について:

本来ならこれがこの話題のトップです。条件的に。しかし個人の経験的にこれは後発であり、技術的に難度が高いように思うことから後回しになっています。

90年代中盤より、本来玩具として発生し、かなり長い年月を重ね発展した「非金属の発射体を空気圧によって発射する銃器型玩具」エアソフトガンを用いて行なう、その製造業者が主体となって開催する射撃競技種目がAPS複合射撃競技ですが、ライフル競技とハンドガン競技があり、近年はこの競技に特化した高性能高安定性の銃器が専ら用いられます。前述の体育協会系競技のように、点数環を印刷された標的の着弾点で点数を重ねる「ブルズアイ」(2分間x5発/ Pistol:5m, Rifle:10m)、2種類の大きさの楕円形を規則正しく15枚並べた標的を一つ3秒以内に撃つ「プレート」(Pistol:6m / Rifle:10m)、平たい板を異なる距離に並べる「シルエット」(Pistolのみ、6・7・8・9・10m各々に30x30mmの可倒標的/2分間x2回2姿勢)、ムービングターゲット(Rifleのみ10m・動距離1m/5秒)の3種混合で競技します。
競技の内容は、これが許可銃砲でないことを考慮乃至は憂慮されて構築してあるようです。必然的に練習環境となる居宅スペースに応じてハンドガンかライフルかになってくるもので、24時間練習可能なことは明白なので、中々市中で練習し辛い(道具を用立てようがない)標的システムを盛り込まれています。多くの参加者にとってムービングターゲットやシルエットに関してはブツケ本番で、「咄嗟の操銃能力」への期待が窺えます。
各競技はそれなり以上に早撃ちを要求する為、従前の各々のような基本的に単発の銃器は使用し辛い設定です。故に使用銃器は銃砲としてかなり高精度高耐久性の立派な工業製品であり、玩具と一蹴することはほぼ無理、かつ製造者に失礼です。そのため、世界中の銃砲専門店はこれらの販売を手掛けています。

厳密なことをいえば、これで使用する銃器も空気銃の一種です。今は装薬銃でさえ全体が合成樹脂製というものもあるので、プラスチックで出来ている玩具というのも当てになりません。発射するのが金属ではないもの、でも、今後クレー射撃や狩猟用の散弾にはプラスチックが有力な候補となっており、これも理由になりません。こうしてもの言いをつけだすと切りがなくなり、事実これを「空気銃」の一種として許可制にしている国もあります。では何故日本ではこれらを玩具としているのかですが、単に「昔の男の子文化」が成長して拡大解釈されているものと理解していいと思います。そういう意味では日本はとても寛大で、許容が深い文化的に優れた制度国家であると言えます。
この種目の特徴は、無許可の銃器を使用すること、製品の完成度の割に安価に求められること、アクティブな射撃が出来ることから参加年齢層が大変広く、ひと桁才から80才台迄を擁することです。高年齢者の多くは協会系競技の出身者です。練習は主に自宅か、意欲的な開催者・競技者の用意する射撃施設が用いられ、上位選手の練習時間は従前の各項が週に数時間であるのにこちらは一日数時間は普通で、人によっては周年全日昼夜問わず練習しており、この競技者の上位選手が既述の各種目の上位選手である例を数多含んでいるものの、ここから既述の種目に移行する動きはそれほど大きくなく、逆の挙動を誘っています。取り付き易さが必要以上に選手の育成を後押しする為、この種目に適する高性能射撃銃の生産は製造者側で制限していますから常に入手困難な状態という、既述の各競技が優秀な選手探しに苦悶しているのと正反対の状態を見せています。但し銃器の扱い方に関しては、玩具類といえども法律で規制されており、これに使う玩具の銃を露出させたまま衆人の往来する場所を移動することは出来ません。昨今銃のケースは銃砲店で買うより玩具店で買う方が安くて良いものが買えると訝しい話もありますが実に的を射ており、許可銃砲の数万倍以上の流通を見せるエアソフトガンの需要に合わせ、世界のケース・ホルダーメーカーは想像を絶するシェアをこちらに依存して成立しています。

これが玩具を侮るなかれと先に申し上げたことが現実に表れている事柄です。発展して玩具っぽくなくなったものは出た釘になり打込まれるものの、常にそのエネルギーに反発して強く逞しくなっていきます。そうして新しく生み出されるものは新たな魅力に繋がっていきます。それはもうメダルではなく、コミュニティの中の平均性、つまり見通せる範囲内での居心地に向かって集約されていきます。何故かと言われればその方が形として見える迄の期間が短く、継続性に富むからです。昔、多少面倒でも皆それを受け入れていることが身辺で当たり前の時代は、仮令金が掛かっても「猟友会とか射撃協会」系でも受入れられました。無理しても受け入れる努力を厭わなかった、といったほうがいいでしょうか。ところがこうして金も手間も掛からず楽しめるものごとが広まると、面倒とか金とかが愈々鬱陶しくなって来ます。大勢がそれを避け出すと、文化のムーブメントとなってしまって組み替えが促進されます。そうなると幾ら煽ぎ立てても面倒で金が掛かる方は組み替えられたもっとも外側、やもすれば蹴落とされそうな端ッコに追い立てられてしまうのです。十才の頃からソフトガン射撃でいつも上位に入っているから、さあコチラがその上級の競技です国際大会もあるんですよ、といってみたところで、その人がそれを狙って精進して来た覚えがない限り、意識してもらうことさえ出来なくなります。こうして文化圏が分かれてしまうと、異種文化圏になっている方は給料でも払って連れて来なくてはならなくなってしまうのですが、ソフトガン射撃の方はむしろそうなってくださいという態度で協会系はあっちの彼方に放ってしまっているのです。せめて、協会系射撃の射撃場がソフトガン大会を誘致する等して、連結性をアピールしていかないと将来は真っ暗くなりましょう。模型屋さんの射撃場は平日昼間から大盛況なのに協会系認可射撃場は閑古鳥が啼いている実態からもそろそろ真面目に考えないと不味いでしょう。

1995年頃迄のソフトガンは、押し並べて既にある装薬銃の商品に酷似させモデルガンとしての愛玩性を主な商業性能として位置付けられていましたが、段々と正確な弾着を要求する客層に向けて、既存のそれらデザインから離れ、性能重視の独自のものが作られ売られるようになって来ました。しかし余りこちら側に突出するとスポーツ性が押し出され過ぎてしまい、玩具という汎用性が高いジャンルから遠退いていく恨みがある為、製造数そのものを制限して業態を壊さないように努められているようです。射撃用に特化したものの中には、見た目はもう既に競技銃の一種として独自の設計、性能は数万発の連続使用にも充分耐え得るものとされていますが、需要を絶対満たさないように供給時点でエンジニアリングがされており、常に品薄にされています。
本場アメリカではエアガンというと空気銃ですが、廉価なものの殆どは日本で作られ輸出されたOEM品です。ソフトガンに関しては、玩具という扱い乍らほぼ全て日本製で、輸入に頼ろうという可能性は見えません。

玩具銃から弾丸を飛ばすものは「銀玉テッポウ」なる時代から存分に数も種類もあった訳ですが、70年代後半のある時期、それらにスポーツ性を格別に与えたものが現れました。それらはモデルガンとは一線を画し、射的を気分的にも沸き立たせるものでしたが、余り成功を見ないまま終息していきます(写真参考)。そのような商品は、大昔のスプリング式空気銃と殆ど同じ構造を以て専用のナイロン製鼓型弾丸を使い、3m程度の距離から結構正確に撃たせたものですが、人気が出なかったのは価格がダイキャスト製の所謂モデルガンと同等か、時として高額な割には「玩具っぽかった」、いや決してそうではないのですが、許可を受けて用いる空気銃を余り目にしない都会の玩具の客層にはそう見えたからです。しかしながら80年代に入ると、専用の弾丸に頼らず汎用性が高い球状の粒を撃つものが開発され市場に投入され始めます。一旦は終息を見た「たまを撃つ」玩具銃に「銀玉テッポウ」の上級版ともいえる、モデルガン的愛玩性も合わせ持つこれらで、「持ちたい、撃ちたい」という遊び心を再び沸き上がらせ性能も増していきますが、やがて威力競争のような現象が社会問題となり、度々縮小したり改めて拡大したりを繰り返していきますが、現在に至る迄に旧来のモデルガン製造者は殆ど消滅、今は凡そモデルガンというのはたまが撃てるものと常識は移りつつあります。

正確に標的を狙うことに特化することは、たまが出るモデルガンという長く多くの苦労をして醸成した市場を側面から穿つ可能性があることは確かです。亜鉛合金の鋳造と成型技術で実物大の模型として銃を自由に持てない日本人の一種の向学心を満たす立場を築いたモデルガン市場は、年齢や経験を重ねた元々の愛好者を引き摺り、矮小化し乍ら存続している状態ですが、それに特化して来た業界が模型を離れるということになる射撃用品の提供業務を模索しこそすれ、改めてこれを専業とすることには深い注意が必要だとは感じます。とはいえ、自身も銃の機能や構造を理解する為に幼少期はモデルガンに相当世話になったものですが、現在は「たまを撃つ」という性能のみにしか興味を持てなくなっており、新たな愛好者には「模型」であるものには全く興味がない人も増えています。射撃を試みたくても煩雑な手続や制限が多い許可銃砲には抵抗があるか、そもそも持ち得ない人も多くあるものですから、事業がもつ技能の仕向け先として、その技能を以て射撃をさせる方向に流れを開くことは損失ではないでしょう。射撃は元々銃器と標的さえあれば何処でも出来ることです。ソフトガンなら5m程度の見通し距離を確保出来れば相応以上に熱中させられるもので、格別拳銃射撃に関していうなら、日本を始め多くの国や地域ではその所有や使用に強い制限が掛かっているものの、全身を高度に体操させられる行ないなので、射撃に特化したものを気軽に求められることは文化面で効用が望めると感じます。
ちなみに写真の銃は、バランスは勿論引き金の機構の各部に調整箇所を多く奢られ、命中精度も大変高いものです。再三いう品薄と、品の性格か或いは主義か何かで、再分解・組立が容易でない部品を用いられている部分があること等、幾つか残念なところはあります。こうしたものを生産する人は、銃器メーカーのように遠い未来へ向けての部品管理が難しいこと、末端の販売人の業態にアフターサービスを期待し得ないことを鑑みて、ユーザーサイドで修理や整備がし易いような製品作りを願いたいところです。

また、競技射撃のシーンではよく行われているグリップのフィッティングに関しては、ことトイガンには絶対必要といえるでしょう。特にピストルは、これがエアピストルであれば今時は殆ど手直し不要な程研究が進んでいてサイズも豊富なので選んで買うだけで不安はないといってもいいでしょうが、こちらはどうもそうはいきません。でも仕方ないとは思います。何万円もしたと云ってもそれはエアピストルと比べて二割程の小額なのです。これでなんでもやって寄越せというのはぜいたくというものです。写真の盛り付けは5分硬化のエポキシ接着剤とおがくずで行います。おがくずは柔らかい材木を木工ヤスリで削って作ったオリジナルのものが手に入れ易く金も掛からず良いと思います。先にエポキシのりを2液混ぜてよく練っておき、それに大急ぎでおがくずをぱらぱらと掛け乍らまたよく練ります。それを素早く希望の箇所に盛って、その上からビニール袋を切ったもので覆い、欲しい形に直していき、時にその上から握ってみて、形を狙ってまた押したり摘んだりして直します。

幾ら命中精度は上がったといえど、トイガンは出が模型ですから、使う人がやることは実に多いのです。どんなに完成度の高いものでも、数万発を撃っていると、単に材料が纏まってくっついているのを買っただけと思える程、やらねばならないことに取り囲まれていきます。でもそうして部品のひとつづつを見つめていくと、各々の役割や重要性、効果的な保守法も分かって来ます。これはやがて許可銃を使うようになった時や、前後して許可銃のあとにこれに触れている場合は現有の許可銃を取扱う上で、必ずプラスになる知識と技量を齎します。学校にでも通っている積もりで、これらに接すると良いと思います。

私が通う射撃場の喫茶スペースには誰かのコレクションのソフトガンが、まるでコッチへ来いと言わんばかりに大量に飾ってあります。同じ射撃の楽しさと緊迫感が手軽に安く楽しめることが分かってしまうと、ぼつぼつ引越しが始まるかも知れませんから認可射撃場で勧誘するのは御止め下さい。