:ライフル種目・バイアスロン・近代五種競技について:

バイアスロンはノルディックタイプのツーリングスキーを履いて行なうクロスカントリー競技とSB競技を合体させたようなものです。元々は北欧の狩猟の習慣を取り入れた軍事教練でウィンタースポーツです。名称は「二つの競技」そのまま、単純明快です。リレー競技もあり、個人では出来ません。逆に近代五種(ペンタスロン)競技は、オリンピックにおいては個人戦のみで、射撃・フェンシング(エペ)・水泳・馬術障害・三千メートル走を複合した所謂鉄人レースとなる夏シーズン競技です。

バイアスロンに使用する銃器はSBのものに脱着可能な5発装填の弾倉を使えるようにしたものに弾倉を4本取り付けられるラックを組み入れたもので、重量は裸の状態で3.5kg以上あります。1976年迄は主に.30口径実包を使用する大口径銃で150mの距離の的を射撃するものでしたが、ルール改訂により.22ロングライフル実包による50m射撃に変更されました。大体150mで的が見える降雪環境というと得られる地域が少ない筈ですので賢明な策です。スキーで走る距離は起伏のある山野を想定した10km、7 .5km、 4.5km 各々ルールに定める距離を、重い銃を背負い走り回って息を切らせた悪い環境で決して大きくはない標的を規定時間内に射抜かねばならない、見ているだけで苦しい競技です。
近代五種の射撃は10mエアピストル20発競技でしたが、2009年以降デジタルピストルとなり、同時にランニングの途中にバイアスロン形式で折り込まれる方式とされ、2日掛りだった競技が一日で満了するようにされました。愈々鉄人的適応力を要求されそうですが、日本等エアピストルの規制が厳しい国や地域において、これまではそのためにマイナー競技となってしまっていた経緯もあるので、随分入口が広まると感じます。
何れも標的は圏的(リング状の点数環)のない単なる黒丸に中るか外れるかで命中を判断するシルエット標的を用います。圏的で点数に追い詰められるレンジシューターにとっては何だか楽そうに見えますが、走ったり滑ったりを散々やる途中にかなり精密な射撃をさせられるのですから、見かけ程カンタンではありません。

バイアスロン発生源の北欧各国には町内会単位のチームもある程普及しています。ただ、その背景には、国民皆兵制度(徴兵期間満了後も予備役兵員として訓練を続ける)があります。成年男子は全員指定の銃を規定の数量の実包と共に自宅におかねばならない、毎年指定の日数を教練に参加して消化しなければならない等の兵役規則の中で、この競技は教練のひとつとして日数に換算されるケースもあるようです。
日本における事情としては、第一国内の競技練習施設は二ケ所、それも自衛隊の演習場の一部です。試合の為には他に民間で数社のスキー場運営会社が協力的に臨時で設営するだけです。その為特別な場合を除き国際競技会に出場する選手は自衛隊員で構成されます。これを狹いとみるか充分とみるかはその時々の事情次第です。夏は射撃、冬はスキーと中心時期をずらして集中練習も可能ですが、日本には余り根付く様子がありません。アトラクション的にエアソフトガンを使用する等して低年齢層を対象にしたり、積雪地に事業所のある企業のクラブ活動等で行なわれてはいますので、楽しむ人口は増えつつあります。クロスカントリースキーイングも一般に認知されて久しくこれから楽しみではありますが、こちらもビーム銃か何かに切り替えていかないと面白いことは起こりそうにないですね。
こうした銃器規制との兼ね合いが常に取り沙汰されますが、何より積雪が必要ですから、銃だけを持たせたところで結局雪が降らねば片手落ちになります。スキーで自信が付いても、銃が何処でも撃てないような状態では練習にも試合にもなりません。実際に窓口となっている団体も、団体競技であることが大前提なので相応に規準を設けて募集しています。銃は選手として登録され推薦書を得れば、手続はありますが持つことは出来ます。しかし、それとこの競技者として成り立つかは別の問題です。撃つばかりならそれで結構ですが、こちらは走りもする冬の鉄人レース。暑いのは辛抱すれば何とか凌げますが、寒いのは我慢ならないのは誰でも同じでしょう。

何れにせよ単なる射撃ではないということです。