:ライフル銃と猟について:

現在日本でのライフル銃の主な用途は狩猟です。使用対象は内国大型獣四種の狩猟と、射撃場に於いての練習のみに限定されています。また猟銃という言葉は狩猟に使われる銃器を指しているように見えますが、法的には装薬する許可銃を示しており、散弾銃・ライフル銃、また狩猟用・射撃用を問わず示します。

明治3年に狩猟法が発布されていますが、その時点での狩猟は現在のような資格制度ではなく地域や家血統による指定制度で、現在のようなレジャー狩猟に関しては、領主や地元財界人の関係者や来客接待等に限られていました。時代的にはまだ弓矢や銛、網や罠といった用具を混用使用されており、銃器については既に屯庫という集落単位で使用される武器庫での集約管理こそ無くなりましたが猟期を通じて使用出来るものでもないという状態でした。
そうした日本における猟用銃器は、舶来の形式がナカナカ普及しませんでした。狩猟地で一般に親しまれていた火縄銃は長い歴史の中で修理法等が集落単位の鍛冶職に迄浸透し、火薬や付け縄も求め易く使い易いものが流通し何百年も安定していたからです。そこに舶来式の後装が割入り始めたのは明治も25年以上過ぎた頃漸く国産の村田銃からで、それでも薬室を金属薬莢として取出す(何度も使い廻す)ことができるものという認知です。

当時商業や技術伝播の為に来日していた高級異人(白人です)もレジャー猟の接待を大勢受けていますが、日本人が本格的な後装式ライフル銃に接するのは軍需徴用を除くとそうした折りのみです。維新時既に徐々に一般的になり始めていた無煙火薬も勿論目にしているでしょう。日露戦争の頃には火縄銃は大体村田式やそうした外国人から齎された元折れ銃にとって変わっていましたが、日本の猟野での銃猟には、口径の大きなものよりも15mm程度の小振りなものが好まれたようです。村田銃は28番や32番半刳り貫きが主で、元折れも16番〜20番が好まれライフル銃は好かれませんでした。これは実用性より必要以上に多くの装薬を使用しないで済む経済性の優位からです。彼らが見た外国人や豪商・高級官僚の持ち歩く西洋式ライフル銃は全くの無駄そのもので、何等かの理由で贈与されても使うことなく死蔵したといいます。
無駄の中には無駄な動きも含まれました。当時の接待狩猟は、ムラ単位で勢子を借り上げ、大きく峰々を囲んで追い出す大掛かりなものが多く、小峰を越してライフルの遠距離射撃で撃ち捕られた獲物を回収するのは大事だったようです。勿論山里の人々はそれを知っています。罠は回収容易な場所に置かれ、銃器は主に罠に掛かった獲物を為留める為に使うものという、江戸時代の長い規制束縛の中で効率を求め集約していたのです。だから非力で効率の悪い前装式の火縄銃でも充分稼げたという訳だったのですが、村田式を普及させたのは、里鍛冶の製品が都市部の工業製品にとりかえられてゆき鍛冶技術が減ると、常に職人技を必要とする前装は段々使い辛くなっていきます。黒色火薬は使い易くても発射後の手入れが大変なので、一々銃身を外して尾栓を抜かねばならない前装銃より、装填棹を抜くなり、ヒンジを外して銃身を解けばブラシがとおせる後装式のほうが楽であり、脱着式の薬室ともとれる実包の製作も、慣れれば却って便利で安全と知られていったのです。

そうしたライフル銃の概念は太平洋戦争後も続きます。駐留軍人や来訪軍属の接待狩猟の折には、手詰めの材料にとライフル薬莢より散弾薬莢を選んで拾う日本人の案内人をみて「日本人は金物を捨てて紙屑を集める」と言わしめた程でしたが、一部見識の篤い外国人は日本の銃猟のあり方を見て「大変効率的で自然資源を無駄なく大切にしている」と評価していました。
が、昭和33年に銃砲刀剣類の所持許可項目が改訂されると、何故かこれらはステイタスのひとつになります。経済成長の後押しも受け、ブームの中で急速に普及していきますが、曾て猟師たちが嫌った過剰な威力の為、無用な乱獲や、そこここで凶悪な犯罪にも使われました。そのため、ライフル銃の制限が徐々に強められることになります。
先ずそれまで狩猟用としても使用され続けて来た.22口径のものは射撃競技用として文部省の指定する当該種目競技者連盟の推薦者のみとされ、その後現在迄に、それを超えるものは有害獣駆除駆逐に従事する指定者と、旋条のない銃腔の猟銃の所持を十年以上継続していることが要件として整理されていき、用途も対象獣を指定したものとなり、効果を齎したものです。

ライフル銃は、対象獣種が指定されているとはいえ、小型のそれらの猟獲には肉質劣化等から余り適当とは言えませんが、大型の農林漁業害獣の調整にはその威力故に効果が期待出来ます。そのためそうした用途には、狩猟用途では免許されない、より大きな口径のものを許されています。その装填弾数は、世界的に5発を共通した認識として整備されており、軍用銃器の転用の場合は装填数を減じた弾倉の使用を要求している例が多く、日本もこれに共通しています。また製造者の指向として、弾倉を即時に開放して銃器から実包を取り除くことが出来、かつ勝手に大容量の弾倉を取り付けないように工夫している製品を多く見ます。

猟用ライフル銃の一例