鉄砲と言うと兎角強さを問うて来られます。そんなものは当たってみなければ分からない、というのが実際のところですが、それを身近に見るにはゴム粘土の試験標的を撃ってみるとたいへん見易いマークを得られます。

図はごく一般的な文具用ゴム粘土を厚み4cm位にした試験体です。大きさは握りこぶし大です。
発射した銃は蓄圧式競技用エアライフルですが、速度を微妙に変えるのが面倒な為、二種類の重量の鼓型ペレットを使用しています。また、あえて猟用の尖頭弾を避けて競技用ワッドカッター弾を使い、より短い貫通性を利用して、無駄な大きさの試験体になるのを避けます。

射距離は3m程、その程度でないと大体明確な差が見られない種類のものです。
射入口は見ての通り、速い程バリが大きく盛り上がっています。でも各々あまり違いがなく見えます。

そこで、切り開いて通り道を見てみます。
試験体は機械固定していませんので、着弾しますと自由振動で緩衝します。もし固定していたら、右下のものは貫通してしまっているでしょう。でもここは経験、ダテに長くやってません。あと3mm位のところで停まるのが感覚的に分かっているので粘土をコノ大きさに留め置けます。
大昔、許可制以前の話ですが、空気銃のタマは文具店等で袋入りで売っていて、五十個程入っているのが三十円位と割合高価なものだったので、出来るだけ数を撃つには回収して再利用したいものの、大抵のものを撃つと潰れて使えなくなってしまいます。少年漫画の古本等は最悪だったそうです。でも当時の子供達は賢く、あれこれ試すうち、学校の彫塑の授業で使うゴム粘土なら、標的としても再利用出来、かつタマが温存出来る一石二鳥の性能があることを発見し、伝承したらしいのです。ナニ、偉そうなことを云っても、私は当時の実行者世代から受け継ぐことが出来たというだけなのですが、普通ゴム粘土を寝間とかで撃つとタマは表面から1cm位のところにおとなしく停まっており、重ねて後ろから撃たない限り、ほぼサイズもそのまま回収出来て、何度も使えたのだというのを利用してみただけです。が、モダンな競技銃は1cmという訳にいきませんでしたね。

弾にはライフルマークの他の変型は殆ど見られません。ナルホド、やっぱり賢いですね。
遅くても重たい弾は深く迄入っていますが、ある程度から先の速度では重たい弾のほうが短く停まってしまっています。
実はこれが速ければ当たるということにならないことの実態なのです。この試験体を撃った銃は、何と左上のセットの命中精度が最も高いのです。一番使えないのは右上のセットで、黙っていてもタマの直径一個分丸々ばらついてしまうのです。これはエアライフル射撃では狙うだけ無駄というもの。エアライフルは室内の無風環境で行う射撃ですが、タマと速さとのマッチングはとても重要です。どうにも当たらないな、と思ったら、射法の検証ばかりでなく、別の種類のタマも試してみなければ性能は引き出せません。

タマが変形しないことも重要なことです。
強過ぎてタマのスカートが余り膨らんでしまいますと、飛翔体としてのバランスを損なう虞れがあります。長さが短くなる程ですと、愈々真直ぐ飛ばすのは難しいでしょう。直径と長さの比率が、製品時と射出時で大差ない範囲であることは望まれると思います。

話が逸れました。
イリョクのことですが、だいたいまあ、 4.5 mm の競技銃のこの弾速での入りはこの程度です。
普通の梱包用段ボール箱ですと、5枚を打ち抜けるか、少し足らないか程度と思われます。
ちなみに玩具の6mmのプラスチックBBを同じ距離で95m毎秒程度で放った入りはこの程度です。
くだんの話の昔の空気銃はこの程度だった可能性があります。鉛は柔らかいので補修も簡単で、サバ缶の底やビールの王冠でちょっとテルテル坊主の裾を押してやればアタリの違いなく再利用出来たんだそうです。