割と手間が掛かるけどもそれをアソブのがこの楽器ですよ。

リードは、完成品が最近は割と沢山売っています。が、それでいいかというと大間違い。それではこの楽器の面白さが8割位何処かに消えてしまいます。オーボエは、音作りを楽しめる楽器です。リードはその音源なんです。

リードを買うのは、自分的に造りたくても見本がないから造れない、どんな音がするのがどのようなリードなのか知りたい、という衝動からおきるべき行いなのです。

リードを買いに行くと、千円位から五千円位迄いろんなのがあります。まあ一般的な楽器屋さんでは二千円位のを申し訳程度に置いていれば良い方ですが、それイッパシの専門店ともなると、こういうケースに詰った状態で目の前にドカドカドカドカッと積まれ、ドウゾお選び下さいとやってくださいます。こういうリードは、機械で大量生産出来るものではなく、一個づつ手で削り、組み上げ、調整の段階を経て来ていますが、買って自分のモノにする迄に自分で手を入れねばなりません。また、手は入れねばなりません。自分で造る時にその求めて来たリードこそ、お手本になっていくからです。買って来たままでは、どれ一つ自分の楽しめる音を得られるもんはない、それがこの楽器のいいところだと思います。同時に、リードがつくれないと「ちゃんとした音」も出ないというもんでもあったりします

音で遊ぶには、正しい調律が必要です。半音も違う音程を基準にしていたのでは、ミミがおかしくなってしまって音楽性自体が壊れてしまうから、大好きなナンバーのお気に入りの旋律もナンカヘンになって面白うないです。音楽的基礎を勉強していない、していてもそれでメシになる程高まっていないそれでは、音階を追うゴトに音程が変化するこの楽器と旨く付き合えないから、こういう便利な機械で補います。これはチューナーという機械で、何Hzずれているか針の動きで示してくれる便利モノです。素人には、こんな感じの針で示されるアナログなモノの方が便利です。それぞれの基準音が出るものを買うと、基準音に合わせるということも可能になり便利です。


リード造りの道具とか、お手入れに使う道具たちです。
くれぐれもリードの自作は安くつける為のことではないということを、申し上げておきます。最初のうちは失敗分で随分損します。お金より時間の損の方が大きいもんです。が、これでへこたれて完成品ばかりに頼っていてはナカナカ自分の響きを楽しめません。
リードも本格的に造ろうとすると葦の丸棒を三つ割りにするところから入ります。それをガウザーで磨いで薄くしてシェイパーで削ってと大仰になりますが舟形ケーンという五分方仕上がったものが売っていますのでここから先で結構でしょう。私は筒を割るところからは一応ヤリますが、舟になった時点で一旦作り溜めをしておいておきます。人によっては二つ折りにしてチュ−ブに巻いて溜める人もいるようですが結果嵩ばることにもなり。チューブはリードを固定する筒ですが、これは音程や音色も左右しますから最初は完成リードを買って調整して使ってみて旨い具合に音程が出たものが寿命になったのを分解して使い、チューブだけ買う時はそれと似たのを買うといいと思います。但し、先の写真で完成品に長い短いがあるように、チューブがバラバラだと合わせていくと結果寸法がマチマチ、音色もチョビチョビ違って来ます。これが気になる人はマイチューブになる銘柄を探して決めなければなりません。そうして得たチューブはリードの寿命が来たら分解してとっておくんですよ。チューブだけ買う時はサイズに気を付けます。長さだけではなく、口の直径や形も自分に合ったものを選ばなければなりません。先生に就いていればこのヘンはちゃんと段取りよく教われるのですが私ゃそういう立場にないから自分で研究する訳です。でも先生は大抵、聞いたままにせず自分で研究するようにともいいますよ。だから私はいろいろやれるようにいろんなチューブを用意して、変にこだわらないようにしています。リードをチューブに固定する為の糸は其れ用に売ってますが綺麗じゃないし高いので私は釣り具屋で売ってるのを使います。色とりどりで綺麗。単色もいろいろあり。シールテープはリードの合わせ目からの空気漏れを止めるのに使いますが、見た目にこだわるならフィッシュスキンを使いましょう。このスキンをテープ状に切って濡らしてリードの根元に巻きますと、合わせ目の隙間から空気が漏れるのを止められますが、余り隙間が多いようでは音に影響するからそらやり直しです。プラークという薄いまな板は組み上げたリードの先端部の削り込みに必要。自作しても良いでしょうが買った方が早い。丸いまな板はリードの完成時点や調整段階でリードを微妙に切り詰めるのに使います。硬い木で出来ていないとリードがまな板に沈むから旨くいきません。チューブホルダはなくてもいいが、あると作業が楽になります。上のリードの写真で、幾つか根元に針金が巻いてあるのは、リードの開き加減を調整してあるんですが、それを旨くやるのに極小のペンチが必要になります。リードナイフは正直いって専用のモノがいいです。欲をいえば、砥石も贅沢しましょう。良い仕事の為ですわ。定規はリードの全長を一旦72mmで仕上げるという自分の形が出来て来ているからその長さにへし折ってあるのをセットに混ぜています。
トーンホールドライバーはオーボエ族の楽器にとって必要な特殊工具です。これはオクターブホールの掃除をする為になくてはなりません。オクターブホールは管に打ち込んである雌ネジにねじ込んである微細な穴の開いた部品で、これを外さなくてはここに溜まった脂状になったもの等を掃除出来ないからです。これを実施する為にはキイを外さなければなりませんが、これには楽器を買ったら付いてくる精密ドライバーだけでは足りませんから、その部分のシャフトを取り除ける大きさのドライバーを別に買っておきましょう。

大雑把に並べましたがこの他に、実際演奏に必要なものとして薄い吸い取り紙とトーンホールを押さえるタンポの張り付き止めに使うパウダーを塗った紙があります。これは楽器屋で売ってますが、化粧に使う脂とり紙や、手巻きタバコの巻き紙でもOK。パウダーは出来るだけ安いファンデーションがいいですが、高いのは香料が強いからということからです。薬の小瓶を流用してリードを湿らせる為の水差しにするとリードを湿らせ演奏準備をするのに便利です。管の内側は演奏中はずっと湿っていてその湿気が露になって垂れていますから随時スワブという、ひもが付いた細長い布を通しますがこれも今では当たり前に楽器屋で買えます。昔はハンカチの古いので作ったもんです。
ただ演奏中上部管の水抜きには、余りスワブは勧められません。布に水がしみ込む前にトーンホールに押し付けてしまうから却ってオクターブホールに水を送り込んでしまうからです。そうなるとオクターブ上の音が皆出なくなる等事故では済まなくなります。もっと怖いのは、詰めてしまって抜けなくなること。聴衆が居ない私のような者でも演奏が継続出来なくなることは面白くないことです。それは鳥の羽を使うことで解決します。写真の大きい羽がそれ用のモノですが、私の住まいの界隈にはトンビが多くて羽が結構散らばっていますので、その中から案配のいいのを何年かに一度幾つか集めて洗って使っています。小さい羽はリードの中の水気を抜くものです。リードは壊れ易いのでこれをチューブ側から差し込んで水気を連れ出し、同時に口腔からの粘膜のかけら等音響的に影響をおよぼす虞れのあるものも処理出来ます。私はこれも拾って来たハトやムクドリのを使いますが、何れも楽器屋さんで買えます。
ただ、スワブを使うと楽器が傷むという話は信じません。羽が手に入らないとか、羽の方が鬱陶しいと思うなら、詰まらせる事故を防ぐ為長いものを使うか、上管用の尻に引抜き用の紐を縫い付けるといいでしょう。抜き通すことを避け、入れた方向から抜くようにすれば、詰めることもないと思います。しょっちゅう洗って良く乾かし、水を吸い易くしておけば大丈夫です。

さらに必要なもの、それは「バネ掛け工具」です。売っても居ますが、既製品は複雑なこの楽器のキイシステムの隙間に滑り込ませられない程大振りだったりして具合が悪いことこの上ないので、鋼線を削ったり曲げたりして2〜3種類を作って持っています。

不安定な細い管の上にカラクリばかりてんこもり、振動体は自作が基本と言うこれ、結局DIYの嵐を連れてくるように出来ている訳です。ですから、仮令美しいお嬢さんがこれをやっても、やがては工具を使いこなし、刃物で「木材」を削る、そこそこの男性的な風貌を示すようになるものです。

細かいキイが多い複雑な楽器だから、ベタっとテーブルや床や椅子の上に置くのは余り好ましくないです。具合のいい楽器立てが売っていますから、こりゃあれこれ代用を探さず売ってるのをそのまま買って素直に使いましょう。何分単価の高い楽器ですからねえ。
楽器を裸で持ち歩くのは剣呑。うっかりコケて壊した時は、二度と買えない時である可能性も。ちょっとした移動にも、楽器を休める時も、ケースにしまうこと。

こうしてこの楽器と付き合っていくと、この楽器が活きる音楽が気になるでしょう。クラリネット等シングルリードの木管楽器が発明される前迄は、この草笛から発展した楽器の種族がリード楽器の中心でしたから、そういう時代、まあバロック期が終わる迄は全部、オーボエのレパートリーでしょうよはっきりいって。音楽的技術力も今よりずっと自然で人間的だった時代のことですし、これはそのまま装備を充実して半音やトリルといった技巧を演じ易く作られて今存在している楽器である訳で、コレ活かそうと思ったら演歌だろうが歌謡曲だろうが映画音楽だろうが、それこそ人が鼻歌で唄うもんでその音域であれば大体オーボエを活かせる楽曲だと考えていいと思っています。倍音を多く含んだ音色はカラオケボックスでボーカルラインを演奏するだけ(結構難しいが)で、そのお楽しみの大部分を得られると思います。

軽く息を吹込んだだけではこの楽器は鳴らないので、適当な教本を買ってアンブシュア(リードに対する口腔の姿勢)を先ず覚え、その次は息づかいを開発することになります。腹式呼吸で、横隔膜の緊張を保ち続けるようにすれば、安定したロングトーンが使えるようになって来ます。そこまでいくと、トレモロも掛けられるようになります。トレモロは横隔膜にかかる力を強めたり緩めたりする複式のモノであり、決してのどを変型させたりして掛けてはなりません。そうすると音程が保てなくなるだけでなく、持続出来なくなります。息は余るものの、圧力が必要なので、いつでも元の吹奏圧に戻せなければ元の音が出ませんのです。

音が出せるようになって来たら、適当に気に入った曲を、耳で覚えるより譜面に書き落として繰返しさらうといいでしょう。ちゃんとした練習曲は教本に載ってはいますが、楽典がしっかり身に付いていない上に調子も拍子も分からないような素人なら、聞き覚えのない練習曲では感じが掴めないからそれから取りかかると却って遠回りしましょうから、身近なものから手を付けた方が面白みも手伝います。ところがそういうヒトが書き落とした譜面なんて信憑性がないのが当たり前で、タチマチ変なことに気付きますから、譜面上でも気持ちよくなるよう何度も書き直して完成度を高めていきましょう。時間は掛かりますがたった16小節でもそれをやって、何調か何拍子かを知れば、他のスコアはそれが基準になって理解されましょう。ダラダラとそうして遊んでいれば、自然と指も回るようになるし自分なりの音も出るようになって来ます。

こういう練習をしていると何時迄経ってもちゃんとした演奏は出来ない、という指導者は沢山居ます。しかし、それに自分で気付かないかというとそうでもないもんでやってみると直ぐ気付きます。学校バンド等のように強制リサイタルという災害に罹災していない私のような環境の人間は、これまた、自然と、それに気付くとスケール(音階練習)に没頭します。それも、何ヶ月もそればかりヤレますしそれでも気に入らないとなるとロングトーンをやったりも自由に出来ます。複雑なキイメカが何も演奏を援助してくれている訳ではなく、正しい運指を以て始めて安定した音程を得ることにも気付き練習出来ます。大切なのは欲求です。自分が好きな旋律を綺麗に奏でたいと思えば、小さなコヤを建てる為に懸命に基礎を叩くように、ごく自然に運ばれていく筈です。音楽に触れるということは、人に聞かせて歓びを与えたいと思うからという人はそれでも結構ですが、何より先に自分が満足することを知る為にするものなのだと思えることですから、満足するように、気付いた不自由は克服するように好きなだけ時間を費やせば結構だと思います。元々これは難しい楽器で、完成型は誰も持ち得ていないでしょう。だからこそ、綺麗で気持ち良い音はどんな音かを自分なりにとことん研究出来るというもんです。誰も何も強制していないのですから満足いく迄突き詰めればいいと思います。

そこで何処ぞの素人ブラスやオケに入りたいならそこでそれらの事務をやっている人にでも相談するといいでしょう。大抵の役場の教育だの文芸だのやっている部署でそう聞けば幾つか紹介して寄越す筈です。が、実は今どきなぞ既に芸術系学校学部も世の中に溢れ返り、何もそれらを出たからといって音楽教員にさえ就けないのは最早当たり前の世の中、音楽の技術を最高レベルに迄教育修練された素人は結構そこら中におり、そういうところに集まっているものですので、私のようなタイプの素人は「おしろうとさん」と呼ばれてここに至って音楽教育を「いちから」受けることになるのであります。でもその時に、ちゃんとした楽器を持ち装備をし、仮にも音が出るようになっていることは、何にもまして助けになるでしょう。自分なりの音楽性をこの楽器で表現出来る独自性もあると自信を持ってしまって良いと思いますが、自信はテングになることとは違います。自信がある人程人の持つ別の自信を吸収することに熱意を持つものであって、自分を押し付けるだけの自信ならそらぁどんなに技巧的に高みに居て知識的につわものでも単なる迷惑です。団体は大なり小なりリサイタル禍に罹災していますので、それを乗り越える為の幾つかの段階的基準を持っていますから、そのスタンダードを理解して新たに目標にする必要がこのあたりから出てくる訳です。しかしオーボエ吹きはまだそこらから掻き集めれば何とかなるという程数に恵まれていない様ですから、そういうとこに集う極上の素人はおしろうとさんの持っているいいとこを見抜いて其処から伸ばし、大事に逃さぬよう指導に掛かる筈ですから、真面目に勉強する機会を得易いエモノだとみて掛かるのも悪くないと思います。

それで不安の固まりになってから、お決まりのコースで習いにいっても遅くないですが、この楽器は其処迄いく途中でそんなこと忘れられる位楽しめます。

気に入ったらこの綺麗な楽器を見に楽器屋さんでも訪ねてみましょう。